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「恋は足手まとい」試写

いやー、ビックリ!!
凄いよ。

シャルル・ベルリングとエマニュエル・ベアールが恋の一大騒動を繰り広げるフランスのドタバタ恋愛コメディ。
冒頭15分くらいの屋敷のシーンが圧巻!
Feydeau, First to Last: Eight One Act Comedies
屋敷の主人である歌手の女、
その恋人で主人公のモテ男、
歌手の元夫、
歌を売り込みに来る中年男、
歌手を我がものにしたい成金男とその従者、
屋敷に仕える給仕たち、
歌手の妹、
など信じられないくらいの人数の、
ある意味壮絶な口撃のやりとりをまとめ上げ、かつそれを追う流麗なカメラワーク。

人々のせめぎ合いが猛烈!
もう見事と言うしかない!

縦横無尽に動き回る人々がもう絡む絡む(笑)。
3重4重に張り巡らせた空間的な構築術に圧倒され、武者震いする。
人間関係が徐々に明らかになってくる会話術も素晴らしい。
こんなにワクワクするオープニングは久々。
このオープニングを観ただけでもう満腹。
ひとつの画の中に、複数の意味合いが存在する映像はまさに理想的お手本のひとつ

この監督の特徴は何と言っても、人物の配置。
多少演劇掛かった要素と、段取り的な演出が散見されるも、
それを越えてあまりある構成力に舌を巻く。
恐るべし、ミシェル・ドヴィル。

主演2人のやりとりの可笑しさは、言うまでもないのだけれど、
お色気もあって、クスッと笑えるエスプリ満載。

調べてみたら、原作のジョルジュ・フェイドー(1862-1921)は、劇作家だった。
やっぱり、と思った(笑)。
矢継ぎ早に展開されるテンポの良さは、そのせいかと。
100年前のストーリーだけど、現代と通じるものがあり、割と新鮮。
だけど、リアリティという点というより、コメディとして観るべき作品かも。


ひとつの画には複数の関係を

★★★★★★★★☆☆(8)

「インサイド・マン」試写

デンゼル・ワシントン、ジョディー・フォスター、クライブ・オーウェンと豪華キャストの銀行強盗もののサスペンス。
銀行に押し入った強盗が、行員や客に自分たちと同じ黒いジャンプスーツに覆面という格好をさせるという設定。
なかなか面白そう。
Inside Man (Score)

オープニングのタイトルワークから惹かれる。
円をモチーフに、おそらく金庫のダイヤルをイメージした目盛りとともに、細切れの文字が回転しながらテロップになっていく。
こういうデザインは、観ているだけで気持ちがよいので、期待感が否応なく高まる。





冒頭で、クライブ・オーウェンが意味ありげに観客に問いかける。
薄暗い場所。
自分は銀行へ強盗に入った、と。
自分は今どこにいるのかわかるか、と。
この“謎”を初っぱなに突きつけられる。
さぁ、解いてみろ、と。
俄然、謎解きたさに火が点く。

クライブ・オーウェン扮する銀行強盗が、実力を行使して自分たちのいいなりにさせるまでの落ち着いた鮮やかな手際に、そしてクライブ・オーウェンの冷静かつ有無を言わせない振る舞いに好感を持ちながら、強盗の目的が遂行されていく。
一方、刑事役のデンゼル・ワシントンが、オスカー俳優らしい味をそこら中に振りまきながら(笑)、強盗と交渉。
スリリングとはいかないまでも、着実に心理戦が展開され、割と脳を使う。この先どうなるんだろうか、と。

で――。
後に、“謎”が明らかになり、「あぁ、こうだったのか」というのがわかるんだけど、
正直、「え? それがここまで引っ張ったネタなわけ?」と、厳しいかもしれないけど思ってしまった。
人間の適応力は恐ろしいもので、もうちょっとやそっとのドンデン返しでは、驚かないのだ。嗚呼、悲しいかな。

スパイク・リー曰く、「これは脚本ありきの映画だ」とのことだけど、
でも、残念ながら、観客が観るのは映画なのだ。
私見では、映画自体は上記のような状態だった。

おそらく、机上ではとても興奮するストーリーだと思う。
脚本として読んだとき、“「凄いものになる」と思ったんだろう”と想像してしまう。
例えば、冒頭の“謎”が提起された後、たびたび挿入される尋問シーン
このインサートシーンのおかげで、この作品は秀逸なものになっている。
また、社会派ネタや人種差別に関するエピソードがたびたび入るのは、この監督ならではといったところ。
特に、人質の子供が遊んでいるゲームに苦笑。
こんなゲーム本当にあるんでしょうか???(観てのお楽しみ)
だけど、サスペンスを盛り上げるまでには至っていない。

伏線があざとい。
ゲーム感覚なのだ。
しかも、それらの伏線が、観客にとってはそれほど重要なことではないのだ。
伝わりきらない伏線。
事象を追っていて、心理に迫れていない。
新しさというか、シャープさが、ちょっと足りないかな。何か眠い感じがする。
とても、キツイことを自分で言っているのはわかるんだけど・・・。
サスペンスを愛しているだけに、もったいない感の残る映画だった。


ゲーム感覚とサスペンスの絶妙なブレンドは、オチ次第

★★★★★★☆☆☆☆(6)

サラリーマンNEO on NHK

警備員の格好をした宝田明が、夜中のオフィスと思われるロビーを軽快なステップを踏みながら踊り、疲れたサラリーマンに「踊らない?」と怪しく囁きかけるオープニングから始まるこの番組。
もう、これだけで興味を惹かれる。
謎のホームページ サラリーマンNEO 2005 青盤
晴れて週1の放送になったわけですが、これがNHKの番組かと思うほど異様。
こういう事をしてこなかったというか、やれなかったと思うのだけど。


まず目に引くのは、個性派演技陣。
宝田明をはじめ、生瀬勝久、ジョビジョバのマギー、田中“BOBA”要次、入江雅人、田口浩正などなど、
それだけで“立って”しまう人たちばかり。
これだけ演劇系の人を集めてくるのがまたイイ。
コントが本当に生きている。

無理に笑わせようとする気負いなくやっている感じが、お笑い芸人のコントと違っていて、疲れない
ちょっと古いけど、第三舞台の面々が出演していたコント仕掛けのクイズ番組「IQエンジン」みたいな、なんだか“昔の”深夜番組バラエティを観ているような感覚

マギーが真面目な顔で「みな“ちゃん”、こんばんは」と言うと、生瀬勝久がマギーを本当にびっくりしたように凝視したりっていうお約束と、たまに出るアドリブが面白い。

ただ、これで終わらないのが、この番組のイイところ。
先週は、カルロス・ゴーンが出演し質問に答えるというなんともNHKらしい方向性。
さすがに、サラリーマンを中心とした番組だけあって、コント内容もそれに近しいものだし、働く人に焦点を当てたコーナーなどもあって、笑いのみならず、へぇ〜という要素も含めてるのがニクイ。
だからこそ魅力的なものになっている気がする。

ちょっと突き抜けた感じの「サラリーマンNEO」。
観てない人は要チェックです。

「ナイロビの蜂」試写

妻の謎の死について、夫である英国外交官がその死の真相を突き止めていく。
「シティ・オブ・ゴッド」のフェルナンド・メイレレス監督作。
最近、社会派、“世界の陰謀”系、作品をよく見かけるけど、本作もそのジャンルに入ると思う。
The Constant Gardener: The Shooting Script (Newmarket Shooting Script)
病気と貧困にあえぐアフリカを救いたいと切に願っていたテッサ(レイチェル・ワイズ)は、その情熱的で行動力旺盛さで、実際に外交官ジャスティン(レイフ・ファインズ)とともにアフリカで活動を始める。
――が、いきなり冒頭で死亡。(無念)


さぁ、ここから謎解きのはじまり――と言っても、ミステリータッチではない。ミステリーなんだけどミステリーっぽくない。
あくまでも、死んでしまった妻が何に巻き込まれ、自分の知らないところでどのような活動をしていたのかを知るために、ガーデニングが好きなジャスティンが行動を起こす。(ちなみに、原題は「The Constant Gardener」)

やはり、いきなり冒頭で死亡だと、つかみは抜群で、一気に引き込まれる。
手持ちカメラでガンガン撮って、目まぐるしく動くカメラワークが躍動感を生んでいる。
これを中途半端にやると、ただのヘタッピになるんだろうけど、徹底してやっているので、独特のリズムを作っている。
ときに乱暴な編集や大胆なフレーミングがあざといと感じるときもあったのだけど、何か強引な勢いで振り切られてしまう。


妻と過ごした時間が回想される一方、妻亡き後、夫である自分に隠された真相が徐々に明らかになっていく過程のストーリーテリングは素晴らしい。
現在と回想が交互に展開され、観るものの脳は、さながら夫ジャスティンのように疑念と推測が渦巻き、休むことなく回転するだろう。

レイチェル・ワイズがちょっと泣くシーンがあるんだけど、その自然さが凄い。
私が全然気づく間もなく、テッサはいつのまにか泣いていた。びっくり。
さすがアカデミー賞助演女優賞受賞女優。(←早口言葉みたい(笑))
レイフ・ファインズもいい味出してて、悲哀と必死さを巧みに表現しててとても好きになった。


サスペンス映画としても秀逸だし、この映画が語る夫婦の愛もじわりと、そして映画全体を支配するアフリカでの事情もぎちっと。
民族音楽がかったサントラも情感があって心にしみる。
そして、客の“落としどころ”を突く監督の采配が、どのように響くか。
さらに、とてつもない印象を残す映画のラストで、どこまで深く感じるか。
この脚本家(原作者? 監督?)、インパクトの与え方わかってるよ。
この映画、イイですよ。
監督の演出に好みが分かれるかも。


リズムって経験? それともセンス?

★★★★★★★★☆☆(8)

「夜回り先生」on NHK ETV特集

悩みを抱える青少年たちに救いの手を差し伸べる先生を追ったドキュメンタリー。
WEB検索してみたら、その方面では結構有名な先生らしく、TBSでドラマ化もされていた。マンガも出ていた。
夜中の繁華街でたむろする若者を見回って歩く。
ガーディアン・エンジェルスみたいな人なのかと思ったら、(近いけど)そうでもない。
夜回り先生・水谷修のメッセージ2 生きていてくれてありがとう夜回り先生・水谷修のメッセージ2 生きていてくれてありがとう

NHKエンタープライズ 2006-04-28
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薬物やリストカット、摂食障害などに走ってしまう若者が、駆け込み寺のように先生の元に集まってくる。
“ひとり児童相談所”みたいに、自宅にメールや電話が殺到するのだ。
先生というより、むしろ医者。精神科医、精神分析医のような印象。

この先生に私が強く惹かれたのは、その語り。
なんと穏やかに、ときに厳しく、しかも優しさに満ちた語り口なのだろう。
中学・高校で講演をするとき、自宅で電話を受けるとき、夜の街で若者に声を掛けて見回り“補導”するとき、
そのすべてに優しさが満ちている。
これが「先生」という人だ。
今の世の中、このような人格者は少なくなっているように思う。

講演の中で、納得の構図が語られていた。
会社で怒られたお父さんは
  →家庭のお母さんに苛立ちをぶつけ、
  →お母さんは子供に八つ当たりする。
  →だけど、その子供は?
その子供は3つのパターンに分かれるという。
  (1)他の子供に対して、ガス抜きをする(いじめ)。
  (2)社会に対して、ガス抜きをする(非行に走って暴走族)。
  (3)家に閉じこもり自分に対して、ガス抜きをする(自傷行為)。
現代社会が抱える大きな闇の最終地点とも言える姿を丁寧に語っていた。

先生が説くのは、今までの「非行」という概念より、「悩み」の根元に焦点が当たっている。
この先生の基本的な考えは、
「優しさ」を他人にあげることで、自分が幸せになれる。
「生きよう」そうすれば、明日は必ずやってくる。
というようなことなのではないかと思った。

人のために生きる。

なかなか難しいことだし、実現できないことなんだけど、とても大切なこと。
この問題は、考え始めると収拾つかなくなるなぁ・・・

先生が語る数々の具体例(症例?)は、真のリアル話なので、痛い。
胸に突き刺さる。
これがドキュメンタリーの力。

夜回り先生は、先生を退職し、今は講演で各地を回っているようだけど、若者からの悲痛な叫びは毎夜先生の元に届く。
それに対していちいち相談に応じているわけだから、このエネルギーは相当なものだ。
“来るもの拒まず”の姿勢が凄すぎる。
でも、それくらいの覚悟がなければ、とてもやっていけないだろう。
さながら現代版救世主のような方。

もうそろそろ寝ようと思っていたんだけど、結構ぐっときたので、書いておきます。

「ダ・ヴィンチ・コード」小説

うー・・・。面白い・・・。
読もう読もうと思っていてなかなか読めなかった本のひとつ「ダ・ヴィンチ・コード」。
文庫版が出たので、これを機に一気読み。
前々から、歴史の謎+サスペンスのようなものだとは聞いていたし、テレビでも特集番組を見ていたので、大枠はなんとなーく知ってはいたんだけど、さらりと見るのとじっくり読むのとでは、当然「質」が違いますわ。
ダ・ヴィンチ・コード(上)ダ・ヴィンチ・コード(上)
ダン・ブラウン 越前 敏弥

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この話って、実はずいぶん昔から言われていたらしく、学会でもそれを研究する人たちがいたらしい。
それを面白い小説の形で、しかもサスペンス・ミステリーという謎を煽る形で発表したから、とんでもないように言われてるようです。

でも、小説的に見ても、暗号と象徴がうまくミックスされ、“謎”が明らかにされるという構成は面白いし、歴史的に見ても、「聖杯伝説」の新解釈はそれだけで興味をそそられる。

ナイフのくだりや、秘密結社オプス・デイの所業は定かではないけど、時代背景がうかがい知れて、知的好奇心を刺激する意味で、この本の意義は大きい。

聖書や美術に親しんでいる人なら数倍楽しめる。
そうでなくとも、サスペンス・ミステリーとしても読めるから、安心。
ベストセラーになるだけはあります。
映画化もされるし。
特設展示も行ってみたいな。
ああ、愉しみ。

「デイジー」試写

絵描きのヒロイン、刑事、殺し屋の三者がそれぞれに関わりあう物語。
「インファナル・アフェア」3部作のアンドリュー・ラウ監督作。
インファナル・アフェアインファナル・アフェア
アラン・マック アンドリュー・ラウ

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私は割と監督で映画を観るタイプなのだけど、今回もその例に漏れず、監督の名で観た。
もちろん、チョン・ウソンやイ・ソンジェ、チョン・ジヒョンと韓国俳優陣が期待の方々ばかりなので、それにも惹かれたけど、やはり監督。
ハリウッドがリメイクするという「インファナル・アフェア」は、ビデオで観たのだけど、面白かった。
――脚本が。

「インファナル〜」は、脚本が良くできていた。
あの設定がすでに“勝ち”。
割と思いつきやすいけど、それを3部作として昇華したのがよかった。
だけど、どうもこの監督の演出というか映像があまり好きになれなかった。

「デイジー」も面白いんだけど、どうもしっくりこないというか、自分だったらこう撮るかななんて考えながら、クサいカットや冗長なカットに「あれ?」と心の中で呟きながら観ていた。

古き良きノワールのハードボイルドさはなく、ノワールがかったラブ・ストーリー。
ストーリーにすんなり入っていけるストーリー・テリングは参考になる。
登場人物3人の視点で描かれていくにつれ、実はこうだったのだ、という内容が明かされていく。
当たり前と言えばそうなんだけど、個々の心の動きがよく分かるのだ。
散漫にならず、最後には集約されていく。

映像のほうは、何だろう、“韓国がかった何か”が感じられるのだ。
別に韓国について否定しているわけではないんだけど、背伸びをしているような、違和感があった。
舞台がオランダだから、なおさらその違和感を感じたのか。ヨーロッパでアジア人がいるのって・・・もしかしたら私の偏見なのかもしれないなぁ。この壁って越えられないのかなぁ・・・。

この監督のセンスなんだろうけど、部分的に趣味に合わないところがある。
また、編集はどうなんでしょうか。ちょっと嫌らしいなと思ってしまった。
特に、あまり意味のないと思われるところで、ミュージックビデオのような編集が時々入ったりして、嫌気がさす。
それと、かなりよいシーンのときに、いまどき「え〜っ?」というような画面構成が展開され、ふと溜息。
編集は編集者が作業するとはいえ、採用するしないは結局監督のセンスなのだ。

チョン・ウソンはイイ役者だなぁと思った。「私の頭の中の消しゴム」でも思ったんだけど、この人が醸す“存在感”は特筆すべきところ。
“殺し屋なんだけど、ヒロインに想いを寄せてしまう”という役を、嫌みなく、しかもデリケートな心を持った青年として演じていて、それでいてカッコイイ。

全体的にはよくできているので、世間的には結構ヒットしそうな感じ。


1カ所でも気にくわないところがあると、それでもうダメ?
 →それって厳しくない?(反省)

★★★★★★☆☆☆☆(6)