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「グッドナイト&グッドラック」(試写)

現代との差

一部本物のドキュメンタリー映像が入っているようで、モノクロ撮影となったらしい。
ジャーナリズムのあり方を問うた作品。

――なんだけど、どうも入っていけない。
いろいろ理由を考えてみた。入っていけないのはなぜなのか。
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その理由は、
1950年当時でも現在でも、ジャーナリズムの立ち位置って変わってないんじゃないか、と。

「真実をありのままに報道する」
あるいは、「思ったことをありのままにさらけ出して記事にする」
それが“正しいこと”であるかどうかはわからないけど、記事を書いたり、報道したりするその時点で、記者なりキャスターなりが自分の思った通りに伝える。
現在では当たり前のことなんだけど、それが1950年代においてはそれすら難しいときがあった――

そのことが、私には“ふーん、そうだったのね”くらいにしか感じることができなかった。
そこでつまづいてしまったので、ホンにそれほど魅力を感じなかった。

デビット・ストラザーンのクスリとも笑わないハードボイルドな演技にシビレる
映画作りって楽しいね、っていう雰囲気が感じられる。
これは、監督として良いのか悪いのか。


でも、1950年代のアメリカは魅力的

★★★★★☆☆☆☆☆(5)

「かもめ食堂」(試写)

キャスティングの妙

確かPFF出身の監督による作品。
さて、どんなものかと少し嫉妬も交えて観てみる(苦笑)。

日常から抜け出したい日本人が、フィンランドの食堂を舞台に繰り広げる人情コメディ・・・かな。
キャスティングが命のような作品。
小林聡美、片桐はいり、もたいまさこ、の組み合わせは名前を聞いただけで“なにかある”と思わせる。
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この監督の(あるいは、原作の)持ち味なのかもしれないけど、全体的に「人生って楽しいよね」という非常に前向きな雰囲気が伝わってくる。
私はひねくれているので、「こんなにうまくいくわけないよ」って感じで観てしまう。

とまぁ、個人的趣向はさておき(笑)、
作品としては、どこかインディーズ色が感じられる演出・編集。
淡々としているんだけど、要所要所でツボを押さえていて割と楽しめる。
ただ、これを世界で上映した場合は果たして受けるのか?と思った。
日本人が観て楽しめる、あぁわかる、といった受け手を限定した映画になっているような気がする
大概の人は持っているであろう“日常を離れたい願望”“現実逃避願望”“海外移住願望”が基盤にある。フィンランドで暮らす日本人の奮闘記と捉えられなくもないけど、それでは作品のテーマではないだろう。
特に訴えたいと迫るものでもなく、何の感慨も抱かずに終わりを迎えてしまった。
ガツンと来る作品ではない。
2時間のテレビドラマみたいな小作品。


ワールドワイドな作品とは――

★★★★☆☆☆☆☆☆(4)

「隠された記憶」(試写)

“映画”の醍醐味

冒頭の3カットでやられる。引き込まれる。
派手さはない。
空間を認識させる手腕にやられてしまう。
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“映画”はストーリーもさることながら、映像を構成する構図=トリミングによって組み立てられている。それの積み重ね。
しかし、映画鑑賞者の大半は、主にストーリーを観る。
ストーリーの面白さで映画の善し悪しを判断する。

配給・宣伝もまた然りで、キャッチーな冠(例えば、アカデミー賞ノミネート作品だとか、有名俳優主演だとか、衝撃的な結末だとか)を付けて作品を売り出す。
そのため、“映画”としてとても見応えのあるものなのに、キャッチーさがないため、埋もれてしまっている映画がいかに多いか。
これってとても残念なこと。
逆にキャッチーな冠があるだけで、客を呼べてしまう映画もなんと多いことか(苦笑)。
ま、いいか、それは(笑)。

日本人映画鑑賞者にとって、「隠された記憶」はそれほどキャッチーではないかもしれない。
それでもご多分に漏れず、“衝撃的な結末”“カンヌの賞を獲得”で売っている。
この“衝撃的なラストカット”は確かに驚くのだけど、それ以上にこの作品全体が放つ監督の傀儡具合に驚く。
このカンヌの賞が“監督賞”っていうのがポイント。

特別なことが起こらない普通のシーンを、こんなにも空間的に魅力のあるシーンとして成り立たせているのに驚く。
画面外を意識的に想像させる構図、1カットもしくは2カットで空間を表現する空間表現能力、抑制の効いた、そして計算されたカット割りは観ていて気持ちがよい。
単純なシーンでも頭を使うのだ。
これが楽しくてたまらない。
私はこういう映画“も”撮りたい。非常にお手本となる作品だ。


画面外が楽しい。

★★★★★★★★☆☆(8)

「シリアナ」(試写)

観た後に議論したくなる

石油の利権を巡り、世界(主に中東と米国)で起こっていることを描いた映画。
タイトルは、シリア・イラン・イラクの3国がひとつの民族国家になることを想定した中東再建プロジェクトのことらしい。

始まって15分くらい経って、なんだか「トラフィック」みたいだなぁと思っていた。
何の前情報もなく観たため、終了後プレス資料を読んだら、“「トラフィック」のスタッフが再結集”とあり、なるほど〜と思わずうなずいてしまった。
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セミ・ドキュメンタリーのような手持ちカメラ手法で、少し落ち着かないけど、この作品に合った撮り方だと思う。
派手な演出はない。
そう(演出)しようという気もない。
世界各地で繰り広げられているであろう“ありのままの姿”を想像させようとする監督の意志を感じる。
奇をてらったり、盛り上がりを過度に創出したりするのではなく、画策や陰謀が進行していっているという事実として語る

4人の立場からそれぞれ見た現実が、話を多少わかりにくくしているけど、多視点はこの手の映画にふさわしい。
このような硬派な映画が興行的にどうなるかはさておき、クルーニーとソダーバーグというビッグネームが強力に後押ししているからこそ作れるのかなぁと思ってみたりした。

スカッとするような映画ではない。
だけど、世界がどのように動いているのかが垣間見える。
もしかしたら、大金と人の命というのは天秤に掛かっているのではないかと思わせる。

「ロード・オブ・ウォー」と同様、観た後に“世の中”というものを強く感じる映画。


視野を広くする多視点構成に乾杯

★★★★★★☆☆☆☆(6)

「ニュー・ワールド」(完成披露試写)

“壮大な映像”と“費やされる時間”のバランス

コリン・ファレル主演、17世紀のポカホンタスの物語。
イギリスから新世界に到着したジョン・スミス(コリン・ファレル)が、先住民の王の娘ポカホンタスと出会い、恋に落ちるラブ・ストーリー。
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コリン・ファレル主演なのだけど、ストーリーのメインはポカホンタス役の15歳の少女。
内面が滲み出るような演技をする。
これは監督の演出によるところが大きいような気がする。
後に登場するクリスチャン・ベールがカッコよかった。

スケール感の大きい大自然の中、じっくりと撮影されたことがよくわかる映像は、大作主義を感じさせる
映画監督なら一度はこういった壮大なストーリーを撮ってみたいと思う。

ただ、残念ながら、映像美を蕩々と見せるゆったりとした映像美は、時として「写真」となってしまう
さらに、ストリングスでこれでもかと持ち上げるサウンドは、何度も続くと気分を削ぐ結果になってしまう。
内容もストーリーとしての魅力が乏しい上に、1から10まで丁寧に語り過ぎて、興味は次第に失われていく。
観ている方の頭が働かないのだ。
受動的映画は、私にとっては退屈なのだ。


やはりストーリーは命

★★★★★☆☆☆☆☆(5)

「ナイト・ウォッチ」(試写)

設定と語り口

「マトリックス」のウォシャウスキー兄弟が好きだというロシアの監督によるダーク・ファンタジー。
ロシアでは、「LOTR」の興行記録を塗り替えたとか。
若者に絶大な支持を持って迎えられたという。
TIFFでも出品か招待かされていたので、期待が高まる。
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――が。
正直、あまりよくわかりませんでした。

まず、伝説がどうのこうのと謳われ、その伝説に基づいてストーリーが展開するような感じなのだけど、この設定に入り込めなかった。
いきなり「ナイト・ウォッチ」の世界に放り投げ込まれて、その世界がさも当然のようなストーリー構成は嫌いではないけど、それは観客が理解できて初めて通じるものだと思う。
本作で私が一番感じたのは、感情移入できる「余地」があまり感じられなかったということ。
それは、説明が不十分なまま、登場人物が右往左往し、観客が咀嚼しきれないまま突然出てくる事象に出会えば、面食らってしまうのは当然かと思うのです。
このひとつひとつの「掛け違い」が齟齬をきたし、“難解ではなく、わかりにくい”展開になっているという印象を持ってしまった。

ただ、映像は興味深く、ミュージックビデオ(最近この手の作品が多いけど)を手掛けている監督らしい。
始まって割とすぐに出てくる奇妙なクモ人形の映像はとても不気味
気味悪さから「イレイザーヘッド」を思い出した。
好きな人は好きなんだろうなぁ、という感じ。

ロシア映画で、こういったエンタテインメント系のイメージがないので、ロシア国内では反響があったのだろうと想像する。
不思議とロシアの雰囲気がスクリーンから伝わる。
なぜだろうと自分に問うてみる。
この“ロシアっぽさ”は何なのかと。
言語でもなければ、顔とも違う、

あえて言うなら、バジェットの違いによるプロダクションとざらついたフィルムの質感か。
対ハリウッドという意味でインディーズっぽいと言えるかもしれない。
世界観は作り込まれているんだけど、安っぽく見える部分とユニークな部分がアンバランスで、何か落ち着かない。


エンタテインメントには、感情移入できる余地を

★★★★★☆☆☆☆☆(5)

「イッセー尾形・太宰治を読む!書く!創る!」千住公演

そのキャラ、どこ製?

イッセーさんの舞台は3回目。
この人と演出家の森田氏が作り上げる一人芝居は、本当に面白い。
今回は約8mくらいの割と近い場所から観ることができたので、細かいところまで楽しめた。
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(本文と関連してません)
様々なキャラクターを作り上げていて、「いるいるっ!」と思わずうなずいてしまう。
それは、キャラ作り(メイク&衣装)だったり、仕草だったり、受け答えだったり、場面設定だったり、多種多様。一挙手一投足が面白い。

どんな芸術にもあてはまるけど、もう「観察眼」に尽きる
ネタもさることながら、この「一挙手一投足」を肌で感じると、視点の鋭さをいくつも目の当たりにする。

想像も多分に加わっていると思うけど、何らかのキッカケがあって、そこからいかに膨らませて、「ありそうな」キャラにしていくか。
この過程は面白くもあり、苦しくもある。
稽古場を見学してみたいなぁ。

「ジャケット」(完成披露試写)

“見せかけの映像”と“力のある映像”の線引き

主人公は昔死んでいて、未来で生き戻る――
とても不思議な映画。

湾岸戦争で頭を打ち抜かれた主人公が九死に一生を得るが、精神を病んでしまう。
妄想で錯乱する治療として、拘束衣(ジャケット)を着せられ死体を安置する引き出しに閉じこめられる。
この引き出しの中で、フラッシュバックが繰り返され、気づくと2007年に飛んでいる。
1992年と2007年を、引き出しを通して行き来するSFと言えなくもない作品。
The JacketThe Jacket

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何と言っても、エイドリアン・ブロディの心神衰弱具合がハマっている。やはり役者は顔が命。このキャスティングに拍手。

そして、印象に残るのは、引き出しの中のフラッシュバック映像と、恐ろしい静寂の中、まばたきの音だけが聞こえる生き地獄。
映像自体に工夫をしようという意図が感じられる。MTV出身という監督の面目躍如といったシーン。

なのだが。

反面、繰り返されるフラッシュバックが多すぎるのか、“いかにも”な感じがMTVっぽいとも言える。耳につんざく効果音も気持ちよいと思える人と、そうでないと思う人がいるだろう。
“見せかけの映像”のギリギリのラインだと思った。
結局、「映画の力」って、小手先の映像ではなく、演出力がモノを言う。

この映画の演出が悪いというわけでは決してありません。
過去と未来で主人公と交流する少女(成長後の女性)がいるのだけど、彼女の家族の問題も取り上げられていたりして、よくできてると思いました。
ただ、映像のひとつひとつに凝るようなこういったアプローチは好きだけど、何か強力な演出でぐっとくるものがなければ、一生モノの映画にはならないんだろうなぁ。
非常にゼイタクなことをいっていますが・・・


やはり全体で映画なんですね。

★★★★★★★☆☆☆(7)